ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来を読んだ
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孫泰蔵さん監修、ダイヤモンド社の小島さんが執筆したつまらなくない未来を読んだ。 近年のテクノロジー界隈ではよく耳にするエストニア。 同国の取材を通して、様々な課題を多角的に考えるのに、非常に良い書籍だった。
少し前にエストニアのe-レジデンシーの取得が流行っていた時にはそこまで意識していなかったが、本書を読むと登録しておいても良さそうかもと思える。 特に行政レベルのモヤモヤをエストニアのアプローチから1つ1つ紐解いてくれるので、読んでいて心地よい。 ブロックチェーンやスマートコントラクトに関する着想も色々と得られることができたのは大きい。 巻末に同技術に関する簡単な説明もついているので、お得な気がする。
個人的には職業柄、エストニアの教育事情に関する第4章は興味深く読むことができた。 ICT教育先進事例としてPISAでも高いランクを誇るフィンランドが注目されることが多いが、エストニアも地理的に目と鼻の先にあり、同国の事例を鑑みて、自国の教育政策にインストールしている試みが興味深い。 同国のプログラミング教育はロボット開発の授業の紹介でなされるが、とても良い。まずは事象から見て、修正していくことで何かを達成するというアプローチは日本におけるプログラミング的思考の授業で達成したいことに似ている。
エストニアの教育方針の重点は下記の4つだそうだ。
- 問題解決力
- 民主的な意思決定
- 批判的思考力
- 個人的責任の自覚
いわゆる21世紀型スキルと形容される能力に近しいものとも思えるが、個人的には最後の個人的責任の自覚という項目が興味深い。日本的に言えば、主体性や自主性みたいな形で言われるが、それはあくまでアクションの着手までしかない。それに+GRIT的な能力を追記しているような表現でとてもよさそう。
また、電子教育システムにより透明性を担保したことで家庭教育の責任を可視化したくだりはなるほどと思った。我が国ではどうしても学校教育にかかる期待値が無尽蔵に大きくなってしまう。うまく仕組みを構築することで教育機関と家庭が同じベクトルに向き合って手を取り合うようにしてあげるべきだ。 そもそも思いは同じなのだから、この辺は上流レイヤーの責務。教育システム側の欠陥なのだろう。
とにかく、話をあげるとキリがないので、興味がある人はぜひ本書を通読することをオススメする。 目次を掲載しておくので、琴線に触れたら手にとって見てほしい。
はじめに いま、なぜエストニアなのか 序章 僕がエストニアに衝撃を受けた理由 ――現地で見つけた「つまらなくない未来」 <孫泰蔵・Mistletoeファウンダー インタビュー> 第1章 なぜ「何もない国」がIT先進国に変われたのか? ――政府をデジタル化する。 1-1 「ハンコ」も「書類」もない国で 1-2 電子政府エストニアの正体 1-3 なぜ何もないのに電子化が実現できたのか 1-4 どのようにプライバシーを守るのか 1-5 「ブロックチェーン国家」と呼ばれる理由 1-6 データとは誰のものなのか 1-7 エストニアで見つけた未来――テクノロジーを使いこなして、自由に生きる つまらなくない未来を描くためのカギ1 「主体性を持って生きる」マインドセット 第2章 なぜ世界中のトップ人材はいまエストニアを目指すのか? ――国民をデジタル化する。 2-1 4万人を超える“仮想住民"の誕生 2-2 世界のトップ人材を呼び込む「秘策」 2-3 土地に縛られない生き方から見える可能性 2-4 エストニアで見つけた未来――グローバルフリーランサーという新しい働き方に目覚める つまらなくない未来を描くためのカギ2 どこでも働ける新しい「働き方」を身につける 第3章 なぜ130万人の国がユニコーン企業を次々と輩出できるのか? ――産業をデジタル化する。 3-1 スカイプを生んだ国、スカイプが生んだエコシステム 3-2 次のスカイプを狙う「エストニアン・マフィア」とは何者か 3-3 ユニコーン企業を生み出すエコシステムの秘密 3-4 「トークン・エコノミー」の産声 3-5 エストニアで見つけた未来――エコシステムが生まれ、挑戦する人があふれ出す つまらなくない未来を描くためのカギ3 コミュニティーの中でともに成長する 第4章 AI時代でも活躍できる子を育むためにエストニアは何をしているのか? ――教育をデジタル化する。 4-1 なぜエストニアの教育は、世界トップクラスの学力を成し遂げたのか? 4-2 IT・プログラミング教育は何をもたらしたか 4-3 アントレプレナーシップを育む「環境」をつくる 4-4 エストニアで見つけた未来――成功体験を与える環境で、次世代のリーダーを育む つまらなくない未来を描くためのカギ4 アンラーンして常に学び直す 終章 「われわれは常にアップデートする」 ――エストニアの現在、過去、未来 <ケルスティ・カリユライド大統領独占インタビュー> 補章 ブロックチェーン技術とは何か おわりに 「歌う革命」が教えてくれること
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おまけ
本書を買ったきっかけは著者の小島さんがFacebookで発売イベントの告知をしていたからだ。
そもそも小島さんと知り合ったのは、2017年に登壇したBigData Analytics Tokyoのイベントにより、ダイヤモンド社でそれ関連の特集を組む時に取材協力したのがきっかけ。その後、たまたま飲み会でお会いすることができた。
なんにしても、意外なところから繋がって、それが良い情報をもたらしてくれているので、弱い紐帯の効力を発揮できているんじゃなかろうかと感じる今日この頃でありんす。
追記
イベントレポートがダイヤモンド社から出ている