白金鉱業Vol.5で「EdTech企業におけるデータ活用現状確認」を話してきました
データサイエンティストたちが多数在籍するブレインパッドさんで先日開催された白金鉱業Vol.5で登壇してきました。
登壇者はブレインパッドさんのオフトゥンフライングシステムの話と受託分析企業の所感に挟み込まれる形でEdTech企業におけるデータ活用の現状をまとめて共有した形です。 資料はSpeakerDeckにあげているので、ご査収ください。
最近、学研さんが2020年の教育改革についてのTVCMを放映しているので、知っている人もいるかもしれませんが、大きく教育指導要領が変わります。 それに関連して、今後必要とされる力を育成できるように教育の現場も変化していこうとしている状況である旨をお伝えしたくて、イベント登壇を快諾しました。
当日のイベントでは、私の前の発表でオフトゥンフライングシステムのデモがまさかの失敗で、ダジャレで温まった会場が凪の状態に陥った状況からのスタートとなりましたが、どうにかお伝えできてよかったです。
悲報 布団飛ばずw #白金鉱業
— にのぴら (@nino_pira) January 23, 2019
懇親会でも教育に興味がある方々と色々と話すことができたので、それも貴重な経験でした。 主催の吉田さんはじめ、ブレインパッドさんありがとうございました。
なお、SpeakerDeckだと参照リンクが飛べないので、下にAppendixとしてつけておきます。
Appendix
Edtechカオスマップ – Tomoki Fujii – Medium
岡⼭⼤学とビッグデータ解析による英単語学習意欲向上のための実証リリース
データサイエンティスト発 “COCKPIT PROJECT” 〜ユーザーを乗せたClassiを正しい方向へ導くみんなの操縦室〜 | Classi株式会社's Blog
ビジネスでインパクトが出せるデータサイエンティストになるためにはを読んで
Rettyの岩永さんが日本経営工学会の学会誌「経営システム」に投稿した記事を読んだ。
文章構成は下記の通り
- はじめに
- データサイエンティストが力を発揮する場
- 課題設定
- 解決方法の設計
- 検証
- 育成
- まとめ
わずか5ページの中で、コンパクトに全体的な提言を盛り込んでおり、さすがである。
私が読んでいて気になった箇所を引用し、品評する形で感想を語りたい。 まず、力を発揮する場について
データサイエンティストが力を発揮するためにはデータの質と量も重要である
そうだ。よくぞ言ってくれた。ビッグデータ以降、量的な話が多いが、質が大事なのだ。 私もかれこれ5年前くらいからそういう話をしている。
データサイエンティストの仕事の肝となるのは適切な課題を設定することである
そうだ。そうなのだ。よくぞ言ってくれた。 適切な課題設定の話はData Analyst Meetup Tokyoで触れていた
解決方法の設計の過程でもっとも重要なタスクはモデリングである。
次に重要なのは実装コストや保守・運用コストを考えたモデリングをすることである。
どうしてもモデルに落とし込めない場合、業務や仕組み自体を変えることができないか考える。
そうだ。そうなのだ。 解けない問題もあるのだ。 よくぞ言ってくれた。
重要なのは施策の成功条件と失敗条件を明らかにした上で知見を残すことである
そうそう。これは重要なこと。 ビジネス側の要求が強いとスピードによって検証が不十分だったり、他の検証が干渉したりとよくないことが入る。もちろん多変量テストのように統計的に直交にして影響度を削除するテクニックもあるが、この複雑高度な社会において適切とはいえない。むしろ共変量や交互作用を無視して良いのかと議論をふっかけたくなる。
ちなみに検証方法の提言の2つはアプローチ的にPearlの因果推論とRubinの因果推論の見地みたいにも見えた。
是非とも大学でサイエンスの素養をしっかり身につける教育を施していただきたい
これは専門性の差異もあるので、すぐにとはならないかもしれないが、現在教育の過程にデータサイエンス教育をインストールしていこうと国が主導しているので、期待したいところではあるが、高校数学から行列がなくなってしまった。 この事実から推測できることは何か、中堅データサイエンティストならわかるだろう。
データサイエンティストは現状では流行りにのった職業の1つでしかなく、価値のある職業として定着していないのが事実である。(中略)ビジネスでサイエンスを実践し、インパクトを残せるデータサイエンティストが一人でも増えてほしいと切に願っている
要は結果を出して、職能として実績を積み重ねていかないと流行りの職業は定着しない。 しかし、データサイエンスの測定方法がビジネスインパクトという1つの測定方法だけでも良いのかという疑問が残るのは事実だ。 それ以外にも価値があるのだという道も模索していきたいと私は思っている。
他にも面白そうな読み物があるので、見てみようと思う。 岩永さん、ご送付ありがとうございました。
ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来を読んだ
Amazonのサイトリンク (Kindle版もあります)
孫泰蔵さん監修、ダイヤモンド社の小島さんが執筆したつまらなくない未来を読んだ。 近年のテクノロジー界隈ではよく耳にするエストニア。 同国の取材を通して、様々な課題を多角的に考えるのに、非常に良い書籍だった。
少し前にエストニアのe-レジデンシーの取得が流行っていた時にはそこまで意識していなかったが、本書を読むと登録しておいても良さそうかもと思える。 特に行政レベルのモヤモヤをエストニアのアプローチから1つ1つ紐解いてくれるので、読んでいて心地よい。 ブロックチェーンやスマートコントラクトに関する着想も色々と得られることができたのは大きい。 巻末に同技術に関する簡単な説明もついているので、お得な気がする。
個人的には職業柄、エストニアの教育事情に関する第4章は興味深く読むことができた。 ICT教育先進事例としてPISAでも高いランクを誇るフィンランドが注目されることが多いが、エストニアも地理的に目と鼻の先にあり、同国の事例を鑑みて、自国の教育政策にインストールしている試みが興味深い。 同国のプログラミング教育はロボット開発の授業の紹介でなされるが、とても良い。まずは事象から見て、修正していくことで何かを達成するというアプローチは日本におけるプログラミング的思考の授業で達成したいことに似ている。
エストニアの教育方針の重点は下記の4つだそうだ。
- 問題解決力
- 民主的な意思決定
- 批判的思考力
- 個人的責任の自覚
いわゆる21世紀型スキルと形容される能力に近しいものとも思えるが、個人的には最後の個人的責任の自覚という項目が興味深い。日本的に言えば、主体性や自主性みたいな形で言われるが、それはあくまでアクションの着手までしかない。それに+GRIT的な能力を追記しているような表現でとてもよさそう。
また、電子教育システムにより透明性を担保したことで家庭教育の責任を可視化したくだりはなるほどと思った。我が国ではどうしても学校教育にかかる期待値が無尽蔵に大きくなってしまう。うまく仕組みを構築することで教育機関と家庭が同じベクトルに向き合って手を取り合うようにしてあげるべきだ。 そもそも思いは同じなのだから、この辺は上流レイヤーの責務。教育システム側の欠陥なのだろう。
とにかく、話をあげるとキリがないので、興味がある人はぜひ本書を通読することをオススメする。 目次を掲載しておくので、琴線に触れたら手にとって見てほしい。
はじめに いま、なぜエストニアなのか 序章 僕がエストニアに衝撃を受けた理由 ――現地で見つけた「つまらなくない未来」 <孫泰蔵・Mistletoeファウンダー インタビュー> 第1章 なぜ「何もない国」がIT先進国に変われたのか? ――政府をデジタル化する。 1-1 「ハンコ」も「書類」もない国で 1-2 電子政府エストニアの正体 1-3 なぜ何もないのに電子化が実現できたのか 1-4 どのようにプライバシーを守るのか 1-5 「ブロックチェーン国家」と呼ばれる理由 1-6 データとは誰のものなのか 1-7 エストニアで見つけた未来――テクノロジーを使いこなして、自由に生きる つまらなくない未来を描くためのカギ1 「主体性を持って生きる」マインドセット 第2章 なぜ世界中のトップ人材はいまエストニアを目指すのか? ――国民をデジタル化する。 2-1 4万人を超える“仮想住民"の誕生 2-2 世界のトップ人材を呼び込む「秘策」 2-3 土地に縛られない生き方から見える可能性 2-4 エストニアで見つけた未来――グローバルフリーランサーという新しい働き方に目覚める つまらなくない未来を描くためのカギ2 どこでも働ける新しい「働き方」を身につける 第3章 なぜ130万人の国がユニコーン企業を次々と輩出できるのか? ――産業をデジタル化する。 3-1 スカイプを生んだ国、スカイプが生んだエコシステム 3-2 次のスカイプを狙う「エストニアン・マフィア」とは何者か 3-3 ユニコーン企業を生み出すエコシステムの秘密 3-4 「トークン・エコノミー」の産声 3-5 エストニアで見つけた未来――エコシステムが生まれ、挑戦する人があふれ出す つまらなくない未来を描くためのカギ3 コミュニティーの中でともに成長する 第4章 AI時代でも活躍できる子を育むためにエストニアは何をしているのか? ――教育をデジタル化する。 4-1 なぜエストニアの教育は、世界トップクラスの学力を成し遂げたのか? 4-2 IT・プログラミング教育は何をもたらしたか 4-3 アントレプレナーシップを育む「環境」をつくる 4-4 エストニアで見つけた未来――成功体験を与える環境で、次世代のリーダーを育む つまらなくない未来を描くためのカギ4 アンラーンして常に学び直す 終章 「われわれは常にアップデートする」 ――エストニアの現在、過去、未来 <ケルスティ・カリユライド大統領独占インタビュー> 補章 ブロックチェーン技術とは何か おわりに 「歌う革命」が教えてくれること
関連記事も興味深いのでぜひ!
孫泰蔵さんも注目!「未来をダントツに先取りしている」エストニアに学ぶ意味とは? | ブロックチェーン、AIで先を行くエストニアで見つけた つまらなくない未来 | ダイヤモンド・オンライン
おまけ
本書を買ったきっかけは著者の小島さんがFacebookで発売イベントの告知をしていたからだ。
そもそも小島さんと知り合ったのは、2017年に登壇したBigData Analytics Tokyoのイベントにより、ダイヤモンド社でそれ関連の特集を組む時に取材協力したのがきっかけ。その後、たまたま飲み会でお会いすることができた。
なんにしても、意外なところから繋がって、それが良い情報をもたらしてくれているので、弱い紐帯の効力を発揮できているんじゃなかろうかと感じる今日この頃でありんす。
追記
イベントレポートがダイヤモンド社から出ている
2018年に会社で買った本を振り返る
年の瀬なので、ブログでも。
うちの会社では、会社で書籍を購入してくれる制度がある。 購入した書籍は今年導入された本棚に蔵書され、みんなで読めるようになっている。
インターンの川口さんとささたつCTOの奥にあるのが本棚
どうやって申請するか
非常にシンプルである。 Slackでブックと叫ぶとbotがdocsの申請リストを返してくれるので、そこにほしい本を書き込むだけだ。 この時ばかりはハンターハンターのグリードアイランド編を思い出さずにはいられないし、快感である。
しばらくすると、プロダクト部の副部長である八谷さんから入荷のお知らせが届きます。
というわけで、僕らの技術書購入は大変に捗っているのだが、私が注文した本は今年10冊だった。 現在発注待ちなのが3冊なので、この制度をなかなか活用していると言えるだろう。
買った本
DeepLearning系
- ゼロから作るDeepLearning
- ゼロから作るDeepLearning2 -自然言語処理編
この2冊は良書として業界でも有名だったので、そばに置いておきたくてGet。2の方の帯に書いてある
作る経験はコピーできない
は非常に秀逸なコピーだと思う。
自然言語処理系
- テキストアナリティクス
オライリーのRによるテキストマイニングを私物で購入していたので、補完の意味でGet。金先生の本は安定感がある。
- 形態素解析の理論と実装
Mecabの作者である工藤さんによる形態素解析本。一部NLPerの界隈では発売が決まった際にざわついたため、私もその祭りに参入した。 あわせて読みたい記事は下記
- 社会調査のための計量テキスト分析
とある事情でKHCoderを使う意思決定をしたのだが、Macに代えて以降久しくWin環境に触れておらず、その間の進化も把握できていなかったので購入した。KHCoderは格段に進化していた事実に気づかされた。
機械学習関連
- 機械学習のエッセンス
はむかずさんの本。数式とPythonコードで構成され、学習にはとても良い内容。界隈でも評判が良い。
- 人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」
新井先生を始めとした研究者が取り組んでいたプロジェクトの詳細な解説本。正直、今年購入した中でベストヒットかもしれない。 あまりにもよかったので、AI通信*1の2019年新企画で取り入れることがすでに決定している。
その他
- エンジニアの知的生産術
西尾さんの著書。Scrapboxでこれらの断片をウォッチしていたのだが、改めて書籍という形になったので、購入。 非常に簡潔によくまとめられている。
- ソーシャルアプリプラットフォーム構築技法
洋一郎さんの著書。現在携わっているプロジェクトで今後プラットフォーム化が見込まれる開発を行なっており、転ばぬ先の杖として購入した。1冊に幅広い知見が詰まっており、良書。
これは他と少し毛色の違う法律関連の専門書。実は今年経済産業省が「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」を策定している。
この策定ガイドラインの解説書にあたるものだ。経験上、契約や権利関係には思い当たる節があるので、レファレンス用に常備した。
ちなみに
自著もきちんと献本をしました
2019年もまた色々な書籍が充実していくことになるんだろうなぁ。 私たちと一緒に蔵書を増やしてくれる仲間も募集しているので、興味があればぜひ!
それではみなさま、良いお年を!
*1:参考:AI通信について
出版してみた話
この記事はClassi Advent Calendar 2018 - Qiita 18日目の記事です。
2日目の記事(AI of the Year をAI通信から選んだ件 - Qiita )に続いて2度目のエントリになります。Qiitaに書いてない理由は察してください。
突然ですが、私、今年初めて書籍を出版しました。
技術評論社が出版しているデータサイエンティスト養成読本の第5弾でビジネス活用編と題して、ビジネスにデータサイエンスを導入して推進する上でのつらみや転ばぬ先の杖となるTipsを様々な著者がオムニバス形式でお伝えする書籍となっています。
ご興味があれば、どうぞ上記リンクよりご購入ください。
記事を書いた経緯
社内LT用にデータサイエンティスト養成読本の出生秘話を話す資料を今日作ったんだけど、これ外でも話せる内容なので、どこかでLTチャンスあったら、アタックチャンスしたいです
— 機械の体を手に入れるのよ鉄郎 (@tetsuroito) November 21, 2018
というわけで、社内のLTではしゃべったわけなんですよ。
しかし、社外LTのチャンスがない!
というわけで、供養の記事です。
出版の経緯
私がよく参加しているTokyo.Rというコミュニティがあります。R言語を使ってワイワイ楽しむ会です。そこにいつからか技術評論社の編集者の方も参加するようになりました。そうこうしているうちにデータサイエンティスト養成読本の1作目が世に輩出されてくるわけです。
2013年の出版でしたが、データサイエンティストのはしりの時期でもあり、けっこう評判がよかったみたいです。そこで味をしめた編集者が立て続けにこのシリーズを刊行していったというわけです。
たまたま、私はこの時期にWebメディアで連載を持っていました。
で、こうなるわけです。
まあ、そんなこんなで4年ほど月日は流れて、なんとなく私の機運が高まったので、出版の企画に至ったというわけです。
共同執筆者集め
仲間を頑張って集めました。
全体スケジュールイメージ
この出版に関するプロジェクトをざっくりとガントチャートにおとすと、以下のイメージです。
比較的順調に進行しまして、約1年弱でリリースするに至りました。
便利ツールの紹介
時には紙とペンが役立つケースもありました
また、原稿執筆時には、Yahoo!の提供するコワーキングスペースのLODGEに大変助けられました。ありがとうございました。
販促に向けたマーケ施策
これも色々と仕掛けました。
- 業界の方への献本 & レビュー
- 対談記事
- 出版記念イベントの開催
- 発売日にnoteで一部無料公開(のちに有料化)
- ほか
成果
書評などの記事に関しては様々ありますが、ストロングスタイルを書いてくださった高柳さんとそれを引用した六本木で働くデータサイエンティストさんには感謝したいですね。
対談記事はデータサイエンス業界に彗星の如く現れたマスクド・アナライズさんと著者の一人であるところてんさんによる対談記事があります。
出版記念イベントは著者の一人奥村さんの協力のもと、DeNA社で開催しました。
募集ではパネルディスカッション1~3しか書いてないのに、300人以上の応募があり、正直みんな何に期待しているかわからなくて、ドキドキしました。
内容については下記のメディアに取り上げていただきました。
そして、発売日に突然のコンテンツ無料公開!(現在は有料化)
僕が書いた章、まるごとnoteで公開しちゃいます
— 樫田光 | Hikaru Kashida (@hik0107) October 30, 2018
でも僕以外の人の章がもっと面白いので、よければ書籍の方も買ってみてください
データサイエンティスト養成読本『ビジネス活用編』の4章を全公開します|Hikaru Kashida @hik0107|note(ノート) https://t.co/dtyqmrBGQc
そのおかげでAmazonのカテゴリ1位にもなれて、多くの反響ももらえました。
まとめ
- 色々大変だったけど、やってよかった
- Amazonに著者登録されて感動
- カテゴリ1位も取れてよかった
- 発売3日後に増刷も決まって、評判もまずまず
- 名刺がわりに書籍が使えるようになった
- 1年を振り返って学びが多かった
- 出版って大変だ
以上です。お疲れ様でした。
明日はayaimamuraさんです。楽しみですね。